Alien abduction 2

Original
空気は乾いて澄んでいた。
デビッドは流れ星を見ていた。
一晩で最も多く見たのは9個だった。
今夜、もし起きていればもっとたくさん見ることが出来ただろう。
しかし、デビッドの深い青い目は3つ数えないうちに眠りに落ちていた。
デビッドは目の眩むような明かりの中で目覚めた。
太陽が真上から照り付けるような時間まで眠ってしまうことがあるだろうか?
キャンプで寝過ごしたことは今までなかった。
いつもなら日の出とともに目覚めていたはずだ。
それにこのささやき声のようなものは何だ?
その眩しさに目を凝らして見ようとしたが、直視することは出来なかった。
どうなっているのか分からない、太陽だってこんなに眩しいはずがない。
まるで真っ暗闇の中で写真のフラッシュを浴びているようだった。
しかしこのフラッシュはずっと続いている!
ささやき声は別の音、大きな、言わば「白い」音によって中断された。
振動が起きてデビッドを揺さぶりはじめ、デビッドは突然めまいを感じた。
もう一度見上げようとしたがやはりまぶしすぎて何も見えない。代わりに下を見てみた。
衝撃だった!
地面が3メートルほど彼方にあり、しかも急速に遠ざかっていた。
デビッドは空中を運ばれている!
明るい光の輪がデビッドのキャンプ地を照らしていたが、自分はもうそこには居なかった。
腕で目を覆って光を遮ると、ようやく大きな円盤状の物体の端が頭上に見えてきた。
デビッドはそれに接近している!
「目を覚ませ!」とデビッドは叫んだ。
夢だと思った。
寝袋から脱出しようとしたが、腕や脚をほとんど動かせないことに気づいた。
ゆっくりとしか動かすことが出来ず、脱出は不可能だった。
夢は最悪の部分がくれば目が覚めることを知っていた。
デビッドの場合はいつもそうだった。
だからこの夢の成り行きに任せることにした。
デビッドの身体は上昇を続け、ようやく光が弱まってくると円盤の底に四角い入り口が見えた。
デビッドは勝手にそちらに運ばれ、そこを通り過ぎると静止した。
再び固い地面に接してデビッドはあたりを見まわした。
小さな部屋のようなところに居た。自分が通ってきた入り口は消えていた。
シューシューという音が始まり、喉が詰まりそうな霧が部屋に充満した。
デビッドは咳き込んでむせてしまったため、寝袋にもぐりこんで有毒ガスから逃げた。
壁からのガスの噴出は止まり、いくらか落ちつてきたため、デビッドは再び顔を出した。
部屋は変っておらず、床のかすかな振動を除けば何の音もなかった。見えるものもなかった。
壁はむき出しでツルツルしていて、四角い「入り口」さえ今はもう見えない。
「上等な夢だな!で次は何だ」とデビッドは思った。
横壁の一つの上にもう一つ四角形の線が浮かび上がり、その四角の中のスペースが崩れていった。
そして唐突に、これが夢ではないとデビッドは知った。
これは悪夢だ!どんなに想像を逞しくしても今まで考えたこともなかったような生物がそのドアを通って入ってきたのだ。
それは、スタートレックだとか、スターウォーズだとか、そうゆうSFから出てきたようなものだった。
それでもデビッドはこんなものを考えたこともなかった!
皮膚がやわらかそうで、毛がなく、脚が3本で目立つ頭が1つ。
似ているといってもそこまでが限度だった。
少なくとも6個の目、6本の腕があり(名前を思い出せないがヒンドゥー教の女神のようなやつ)その先には指と思われる房が付いている。
生殖器(1つか複数か分からないが)を隠すためなのか、腰にだけ布を巻いており、その生物全体としては明るい青色をしていた。
それぞれの目は別々に動かせるらしく、それらがグルグル動いて自分を見ているのを見るとデビッドは気が遠くなりそうだった。
別のもう1匹が現れると、それは振り向いて何か音のようなものを立てた。
その時初めて、3本目の脚が床にかろうじて付くかどうかという、しっぽであると気づいた。
それは長くしなやかで、1回猫のように前後にヒュイっと動き、2匹が会話を始めると動かなくなった。
デビッドは今度は完全に寝袋の中もぐりこみ、目が覚めますように、と祈った。
デビッドは背中を突つかれるのを感じ、ギュっと身体を抱え込んで丸くなった。
頭の中で目の前にある可能性を否定しようとした。
エイリアン??UFO???あり得ない!!
デビッドは地球外生命の存在を信じてはいたが、自分が遭遇するなんて考えたこともなかった。
そんなものは未来の話だ!
「目を覚ませ」と心に命じた。

22 Oct 05 By wildestdreams 14 Comments

Alien Abduction 1

Original
デビッドは街を離れるのが好きだった。
人や世間や普段の生活から2,3日遠ざかるのが好きだった。
そして今も、コロラド山麓の丘陵地帯の適度に樹木に覆われたエリアを通ってハイキング中であり、完璧なキャンプ地を探していた。
今回は2晩だけのキャンプだった。
1日半かけて許可をくれた駐車場までドライブして地元のモーテルで1泊し、日の出とともに出発した。
キャンプをするには1年で一番良い時期だ、日中は暑すぎることのない陽気だし、夜に涼しくなれば寝袋が心地よく守ってくれる。
デビッドの寝袋は最新型の軽くて丈夫なやつで、荷物に入れても重くはなかった。
しかし太陽が高く昇ると結構暖まってきた。
しばし止まってシャツを脱ぐと筋肉の盛り上がった身体があらわになった。
自分を見下ろすと、胸毛がないのが残念だとちょっとだけ考えた。
でもそのおかげで長年続けたトレーニングの成果がくっきり見える。
デビッドの腹筋は見事だった。
それでも、大胸筋が大きな茶色い乳首を見せびらかすように盛り上がっている方に目を奪われていては気づかないかもしれないが。
その上には鎖骨がくっきり浮かび上がっていて、がっしりとした広い肩につながっている。
腰と尻は締まっていた。今でも31インチのジーンズをはくことが出来る。
身長は177センチくらいで、風呂上がりの素っ裸で計った体重は77キロだった。
ウェーブがかった茶色の髪が耳を半分覆い、豊かに波打った髪が額にたっぷりとかかっていた。
彼の腕は力強く、肉体労働にも慣れていた。
もっとも最近昇進して以後、力仕事は減ってきていたけれど。
全体として見れば、これまで27年の人生はそれほど悪くなかった。
荷物を担ぎ直して再び出発し、より高い丘へと登ってゆく。
4時頃になって、デビッドはついに自分が思い描く完璧なキャンプ地を見つけた。
小さな牧草地は比較的平坦で、デビッドが今抜けて来た木の茂ったエリアに接していた。近くに小川があった。
彼は小さなテントを張り、その中に荷物を入れ、簡単な食事の準備に取り掛かった。
大きなコンロを持ち歩きたくなかったので、このようなの小旅行のときはいつもフリーズドライの食品しか食べなかった。
ただし朝はコーヒーを飲むことができるように、湯を沸かす小さなバーナーだけは持っていた。
黄昏がせまり気温が下がってくると、少し暖を取れるように小枝を集めて慎重に小さな火を起こした。
デビッドは林からはなれて開けたところでのキャンプが好きだった。
そうすれば星を見ながら寝入ることができるからだ。
デビッドは星達に魅了されていた。何十億もの星達も、ここでならより一層良く見ることが出来る。
夜の帳が下りると、デビッドは残りの衣服を全部脱いで、寝袋に這いこみ、仰向けになった。
今夜は特に星が輝いている。

20 Oct 05 By wildestdreams Write a comment!